マルチオミクス解析が切り開く HPV 関連中咽頭癌治療層別化への未来
中咽頭癌は頭頸部悪性腫瘍の中でも疾患数が増加している. 比較的予後良好な HPV (ヒトパピローマウイルス) 関連中咽頭癌に対して治療 de-escalation の試みがこれまでに進められたが, 主要臨床試験で期待された成果は得られていない. その背景には20~30%に存在する予後不良群の存在が指摘されている. これらの層別化と治療最適化には分子基盤の解明が不可欠であり, 近年はゲノム, エピゲノム, トランスクリプトームなどを統合するマルチオミクス解析が導入されている. 頭頸部癌の大規模ゲノム解析により, HPV 関連中咽頭癌では TP53 や CDKN2A 変異が少なく, 代わりに PIK3CA やクロマチン制御関連の変異が特徴的であることが示された. また, RNA-seq では HPV 陽性・陰性間で異なる分子サブタイプが同定され, DNA メチル化解析では HPV 関連中咽頭癌に高メチル化群が存在し, 予後良好群として層別化できることが明らかとなった. 一方, 単一細胞解析により, 腫瘍細胞と間質細胞の発現特性を分離し, 従来のバルク解析では見えなかった腫瘍内不均一性の実態が解明されつつある. さらに近年注目される染色体外 DNA (ecDNA) 解析により, HPV 関連中咽頭癌においてヒト・ウイルス融合型 ecDNA が同定され, 網羅的エピゲノム解析との統合解析により新規エンハンサー形成が確認され, 新たな治療標的として注目されている. 以上から, マルチオミクス解析は HPV 関連中咽頭癌の予後不良群の同定と新規治療戦略構築に資することが期待され, 今後の個別化医療実現に向けた重要な基盤となる.
Authors
- 拓也 中川
Publication Details
- Journal
- Nippon Jibiinkoka Tokeibugeka Gakkai Kaiho(Tokyo)
- Published
- 2025-12-20
- DOI
- https://doi.org/10.3950/jibiinkotokeibu.128.12_1307
- Primary Topic
- Head and Neck Cancer Studies
- Type
- article
- Field-Weighted Citation Impact
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